10月25日

とても前向きな気持ちで通勤列車のボックス席に座っている。進行方向と同じほうを向いてトンネルをくぐる。シャッフル再生がnever young beachの明るい未来を流す。ぴんと寒いけれど晴れている。黄色い葉から先に紅葉する。

 

バス停までクレイグが来てくれて、車内のわたしをみるなりボーイのように一礼してからきゃっきゃと手を振ってくれた。まるでお姫様みたい、と言おうと思って英語を考えていたけれど、ステップを降りてクレイグと目があったらそんなのどうでもよくなって「long,long,long time no see! craig!」と言ってハグした。「rain! rain! rain! my storm!」だれが暴風雨か。わたしたちの間にカピパラ1匹入るようなふんわりとしたハグ。動悸を抑えて踏み入るつもりだったので拍子抜けした。ハリーポッタールームと呼ばれる隠し部屋に通してもらったら本当にハリーポッターみたいな部屋でワオと思い、ワオと言った。

 

覚えてる?はじめてあなたの講義とった次の週、遅刻だと思って走っていたら後ろから!あはは、僕がクラクションを鳴らして、お先に!って追い越したんだよね。そう!わたし、あれ、とてもドラマみたいだったなって今でも思い出す。そうか、うれしいな。

 

きみの深い闇のような時代に出会ったもの全てがきみに何かを気付かせる日が来るよ。そうかもしれない。深い闇の中でいろんな人とデートをした? どうして? 僕はレインくらいの年の時同じように人生に迷っていろんな女の子とデートしたからだよ。あはは。いろんなって言っても4人くらいだけどね。わたしも似たようなもんかも、今のボーイフレンドはそのときの悪友だったから。たくさんの悪友の中でも彼が輝いていた? そう、のちのち輝いてきた。あはは、きみは大丈夫だよ、限界のない女の子だから。限界なく楽しく、幸せな人生になるし、他人をそうさせるのがきみの雨だろ? 違うかな。

no limit という単語がまるで天啓のように余韻を残す。物語をやめられない。

 

f:id:shinohiraishin:20171025080212j:image

 

この景色をまた見られただけで、わたしはこんなに泣きそうで、そんなことは全くないんだけど、こんなことにならなければそのほうがずっとましだったに決まっているんだけど、よく頑張ってきたな、と思った。もっと苛まれるかと思っていたけど全てが歓迎と祝福のようにすら思えた。ほほえんでくれた。こんなに寒いのに紅葉はしていなくて、まだやれるって思った。まだやれる。コンクリートの匂いなのに、たしかに懐かしい匂いだった。

 

 

思ったより早く仙台に戻ってこれた。玲子とみずきが2人並んで座って待ってくれていてかわいい。小さなコップにすぐ消えるビールの泡を眺めながら、わたしの一刻も早く忘れたいものたちや寄り添って来る悪魔たちがあっけなく小さくなっていった。何も間違っていないし、これからもそう。こくりと飲み干して最終バスに乗った。