11月29日

 

業務に使う資料のために、大きく印刷された沿岸の地図の津波浸水区域を太い黄色のペンで塗りつぶさねばならなかった。「もっと濃く」と朱入れされて、二度上塗りした。波と同じ進行方向にペンを動かすことがなんとなく憚られた。無秩序に塗った。黄色でよかったと思った。道路が開通する。6年かけてやっと。

 

 

きみのブログは落ち込んでる時の方が面白いからずっと落ち込んでたらいいよ、と、あの時のわたしはよく言えたなと思って笑っている。他人にひどいことを言われたことはずっと覚えているのに、自分が何を言ったかは覚えていない。都合がいいと思う。いずれ愛する人になるとは思っていなかったわたしが、あのへんな斜めの屋根の下で彼にどれほどひどいことを言ってしまったか、正直なところほとんど覚えていない。年上の彼女とかじゃなきゃだめなんじゃない?といったら、なるほどなあ、と言われたので、鵜呑みにしてんじゃねえよつまんない人だなあ、と言った、それだけ覚えている。そのつまんない人と交際している。交際するとぜんぜんつまらない人ではなかったことがわかる。

はじめて会ったとき今思えばあれはきちんとしたデートだった。方向音痴だから案内してくれと言うわたしに「迷ってみて、おれ全く方向音痴じゃないから最短ルートでたどり着いてつまんないんだ、迷ってるところ見たい、見せて」と言った。わたしが迷っているところを見せたから鵜呑みにして迷ってるのかな、とか思う。かわいい。かわいいとか言ってる場合ではない、げんき出して。げんき出してっていうか、自信持ってほしい。でも交際する前からぜんぜん言ってること変わらなくて、浅い沼で堂々巡りをしていて、一貫してつまらない人で、つまらなくて、おもしろいなーと思う。金髪のわたしが、ぜんぜん変わってねーじゃねーか、と爆笑する。

良くも悪くも、と言うときはたいてい配慮しつつも悪いこととして話すわけなんだけど、良くも悪くも、わたしは自分が他人の人生を劇的に照らすことができると思いこみすぎていた。実際照らせていた。でもそれはステージの明かりで、リビングのライトにはふさわしくなかった。太陽や星や野うさぎや街の光やオムライスにわたしを例えてきた人がいる中で、彼だけがわたしをソファと言って、腰掛けようとしてきた。ようやくワープやめて電車に乗るようになったんだね、と言われたとき、わたしはお手上げだった。

 いつも通り落ち込んだ日記が更新されるたび、わたしに何ができるだろう、とつい考える。わたしは彼の何を知っているのだろう。でも、したくてしているのだろうし、わたしの知っている彼がわたしの彼なのだ。電車に乗るのをやめてワープすることだって、わたしといればいつでもできる。

 

 

 薬の副作用で眠気の泥をかぶりながら賢いひとなのだろうな、と思いつつこのブログを読んでいた。そのうちに寝てしまう。

http://kasasora.hatenablog.com/entry/2017/04/25/190000

こういう速度と密度の日記にずっと憧れていて、かなわなかった。正しさで殴るような。

 

りん子は俗に浸って元気なのか、ユキチさんは異国で大麻を吸って死ねたのか、名前を忘れたけれど、目がたくさんある男の人の絵を描いていた彼は果たしてほんとうに気狂いだったのか。あの時に出会った人の名前をどんどん忘れて、書いていた文字をどんどん忘れて、ただ、その背景が紺に近い青色で、白文字だったこと、覚えている。

来月北海道からインターネットのともだちがわたしに会いにきてくれる。7年間ずっと友達で、わたしの日記を永遠に読んでいてくれて、わたしたちはまだ会ったことがない。いろんなことを思い出すけど、いろんなことっていうのはモバイルスペースのことで、mixiのことで、午前三時の、最近あなたの、プールサイド。

 

日記でしか他人と会話できなかった時期があって、スマホのかたちの黄色いガラケーを使っていた。シュッ、てスライドできるやつ。シュッ。